「女の人って何歳になっても死ぬまで自分の着物を手放さないんだよ」

着付教室で先生が言っていた。

確かに祖母もいつも箪笥の中身を私に見せるだけでした。実際に譲り受けたのは、天国に行った後、少しだけ(たくさんいる従姉妹達に配慮)

会社員を50歳前に辞め、日本舞踊と華道の師範として人生を駆け抜けた伯母の家は、私が「着物博物館」と呼んでいる。日本女性の文化の塊みたいな伯母はあいにく息子も孫も雄だらけ、小さいころから私を娘の様に可愛がってくれていた。

その伯母との今までの時間は、顔を見せに行くたびに1,2枚ほど、もう着られないなあという色味の着物をを少しずつ渡されていた。

ここ1年程で明らかに体調が悪くなった伯母。先日顔を見に行った時は今までと少し違っていた。着物部屋に私を呼んで、着物と帯のしまってある場所、箪笥の中を全部私に覚えろという。そして欲しい物全部持って行っていいと言う。

美しい着物を沢山目の前にして本来素直に興奮したはずの時間。伯母の焦りを感じたその空間は、泣きたくなる自分の気持ちをそらして、いつもと変わらない表情を作るのに精いっぱいの時間となっていました。

伯母の旦那さんである伯父も、弟である叔父も、それを見ながら

「智恵がいて良かった」って。

大好きなおばちゃんも、みんな私に着物を渡して安心したような表情をしていた。

またこれは今度だねって、まだまだ愛した着物に囲まれて元気でいて欲しいから、少し派手目のお着物だけを譲り受けて帰ってきました。

また次ねって。

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